慢性鼻副鼻腔炎が脳卒中のリスクを高める
副鼻腔炎がある人は脳卒中の罹患率(1年間に脳梗塞にかかる可能性)が7.5%から10.6%に上昇するそうです。
台湾の研究グループの報告なのですが、台湾は副鼻腔炎群と対照群ともに脳卒中のリスクが高いですね。
なお日本の脳卒中のリスクは、0.3-0.4/100人年程度です。罹患率は0.3-0.4%ですね。
内容も難解で、このブログの本旨とは離れてしまうのですが、書き始めて、ほとんど書き終えたので、公開しておきます。
その元となった最下段の文献の抄録を簡単に翻訳して、下記に記しました。
目的/仮説:
慢性鼻副鼻腔炎(CRS)が頭蓋内の脈管に影響しており、脳卒中発生に関係しているかもしれないことはすでに広く知られています。
しかしながら、CRS患者での脳卒中リスクの詳細はまだよく分かっていません。
この研究は、台湾で大規模母集団に基づくコホート研究法を行なうことにより、CRS患者での脳卒中の頻度およびリスクを調査することを目標としました。
方法:
対象はすべて台湾の医療保険データベースから抽出されました。
この研究ではCRS患者は15,846名で、コントロール群は47,538名で対象は無作為抽出されました。
私たちは、慢性鼻副鼻腔炎と診断後、個々の対象を5年間追跡調査を行い、脳卒中と診断された対象を同定し、慢性鼻副鼻腔炎の診断後の脳卒中の5年のリスクと対照群を比較しました。
結果:
5年の観察期間中の脳卒中の発病率は、CRS群および対照群の100人年につきそれぞれ100人年当たり10.65(95%のCI: 9.93*11.41)および7.53(95%のCI: 7.18*7.89)でした。
CRSに罹患し、5年の観察期間中に虚血性脳卒中の診断される可能性が対照群と比較して高かった(HR = 1.34、95%のCI = 1.18*1.53)。
しかしながら、クモ膜下出血(HR = 1.52、95%のCI = 0.94*2.47)あるいは脳内出血(HR = 0.96、95%のCI = 0.71*1.31)の危険率に有意差は認めなかった。
結論:
CRSを持った患者は5年の観察期間に脳卒中を発症するリスクは対照群と比較し高かった。
参考文献)
Chronic rhinosinusitis increased the risk of stroke: A 5-year follow-up study†‡ Jiunn-Horng Kang MD, PhD et al.
The Laryngoscope Volume 123, Issue 4, pages 835–840, April 2013